《オーストリア学派の特徴》

オーストリア学派の特徴》
先ず初めに、オーストリア学派の特徴としては主観的な効用utilityに着目する(一定量の財がこの財を消費するある特定の個人の欲望を満足させる程度に着目し、これを効用と呼ぶ。例えば飢えたものにとって一口目のパンは何物にも代え難い効用があるが、それ以降は段々と効用が小さくなる。こういう具合に消費される単位が増加していきますと、次第に彼は満たされていくから、新たに付加された一単位に負うところの満足の度合い―限界効用(marginal utirity,Grenznutzen)が次第に減少していく。この事実を効用逓減の法則(Law of diminishin utirity)と呼ぶ。
 しかし人は様々な財を消費するので、これらの財がこの消費者がどのように消費するであろうかということを研究する必要がある。
 財は一定の価値を持ち、それを得るにはその価値に応ずるだけの貨幣を与え貨幣の代わりとして財を獲得する。この貨幣は、彼が何等かで生産に関与しその報酬たる所得(income,Einkommen)として得る。これを一定額の所得の面から見ると、様々な価値体系を前提とし、自分の所得を数多くの財に配分支出するといえるが、限界効用論によると消費者は所得を交換に得られる諸々の財の総和が極大になるよう配慮すると考える(消費者が合理的ならそうなるだろjk)。そしてその様な大満足の状態とはどういう状態であるかを研究し、結論として、そのような状態は各財の最終単位のもたらす効用、すなわち限界効用が各財の所得単位について均等な状態だというところのものとなる―各財の限界効用をその財の価格で割ったものが互いに均等な状態だといえる。そして各財の限界効用がその価格に比例する状態こそが、与えれた条件の下でこの消費者に極大な満足を保障する状態であり、この様な状態を規定する法則を限界効用均等の法則(law of equi-marginal utilities)と呼び、この法則こそが個人の経済行為の合理性の最後の根拠であると考える。
 彼らは交換現象(麦と米を交換のような)の背後にこれを規制する原因を効用だと考えた―ゆえに経済の本質として個人主義的な価値論をもっていた。つまり彼らは交換経済社会の合理性の最後の基礎を個人の主観的な評価に求めた。すなわち経済の意味を、自己所得を自覚的に支出するところの個人の主観的評価に求めた。←近代を特徴付ける自我意識の台頭という事実に照応している。

近代経済学の解明〈上〉第1巻その系譜と現代的評価 (岩波文庫)

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