アイドルマスターSPの服が1000円らしい それは高いか安いのか? 

 アイマスの服が1000円ということで話題になっているらしい。http://guideline.livedoor.biz/archives/51171649.htmlを読んでみると千円の服が高いか安いかが話題の中心となっていることが分かる。なぜ千円の服が話題になっているのか。それは別段不思議なことではないだろう。それは、ゲーム内の現実には存在しない女の子のための衣装に千円も払うの?え、おまえオタなの?いや、オタであってもそれはなんかキモイわーという平凡的な感情の現れであろう。その感情は理解できる。「それでも私は当然買いますが何か?」という者に対し侮蔑と羨望が入り混じる眼差しが向けられるのも容易に想像できる。
 しかし、千円の服を買う者がアイマスのファンであり、彼女達アイドルを愛しているならば、まぁなんとなく理解できる。しかしこれで納得はできない。何故ならアイマスを愛している者、信者だったら一万円でも払うだろうと容易に想像できてしまうからだ。だからこの問題に対する回答の基準をアイマスを愛するプロデューサーたちの価値観に据えてしまってはいけない。より重要なのは、ライトユーザーやアイマスを知らない人達、アイマスをプレイしているが千円は高いと思ってしまっている者達に対して、本当にこの値段設定は高いですか?と問いかける試みだ。
 さあどうだろう、千円のこの服は高いだろうか

 君の千早が今までになかった魅力的な姿になることに対する対価として千円は高いだろうか。彼女がこの姿で歌い微笑みかけてくれる様を、「魔法を〜かけて♪」と歌ってくれる様を想像してみてくれ、この値段が高いだろうか?魔法にかかってしまうだろうjk
 脱線してしまった話を戻す。まず話題となるのは千円の服は高いか安いかだ。率直に言ってこれは安いだろう。かのユニクロ様においてさへ千円で服を上下一着用意するのは至難だ―夏服のセールでギリギリできるかできないかだ。千円払っても品川から小田原へ行くこともできない。コンビニでちょっと買い物したら千円超えてしまうことなんてザラだ。千円とはその程度の値段だとも言える(貧乏な私にとって千円は大きいが)。この程度の支払額を高いと言ってしまうのは何故だろうか。それは現実の女の子ではないヴァーチャルでしかない女の子に対して服を、しかも千円もする服を買うのは理解できない!という理由が主なものではないだろうか(PSPの画質が、とかその辺もあるだろうが)。
 確かに現実ではない虚構の女の子に対して千円ものお金を払うのは馬鹿げた、理解しがたい好意・行為かもしれない。しかし、それであってもこの料金は高いだろうか。例えばこれが、現実にいる女の子に対して千円の洋服を買ってあげるという場合だったらどうだろうか。恐らく正反対の話題で盛り上るだろう、つまり、彼女や好きな人への贈り物として千円の服は安いか高いか?これで「高い」なんていった日にはそいつは総スカンを食うだろう発言小町辺りで。そう、現実の女の子や自分の想い人に対して千円の出費など高いか安いかの議論にあがる以前の問題だ。想像してみてくれ、君が好きな子に服を買ってあげるとなったら千円という値段を高いと思うだろうか・・・思わないだろう。
 であるならば、自分が好意を寄せている女の子に対し、その子がさらに可愛く、新たな可能性を得るための投資として千円を支払うことは高くないと言える。好きな者に対して好意を寄せるものに対して、例えそれが異性に対する性愛的な感情を含まなくとも高いということはないだろ。こんな具合に考えるとやはり、千円の服は高くないむしろ安いという結論に至る。
 たとえそうであってもしかし、彼女たちは現実に存在する女の子じゃないという叫びが出てくるだろう。その通り彼女達は二次元にしか存在し得ない汚れを知らない理想的なアイドルであり、現実に触れることは出来ない存在だ。
 と、ここで触れることの出来ない理想的なアイドルという点に注目して欲しい。現実のテレビで歌い踊るリアルなアイドルと、アイマスというゲーム上でのヴァーチャルなアイドルとは現実世界に実在しているかいないかという点を除いては、「触れることが出来ず、画面の向こうにしか存在しえず、理想的で、汚れを知らない『アイドル』」という点において両者は同質の存在ではないか。握手会があるとか言わない様に
 この様に捉えるとヴァーチャルでしかないアイマスのアイドル達は、リアルなアイドル達よりも俄然輝きだす。なぜならリアルなアイドル達に対して我々は触れることもできず、ましてやライブの衣装などを決めることは出来ない。しかしアイマスのアイドル達にならば、君はファンという壁を越え、お金を払い衣装を買うという行為を介してよりリアルなコミュニケーションを彼女達と営むことができる。たとえそれが同じ搾取という形をとっているとしても、リアル・アイドルにプレゼントを送ったりグッズを買って収入や人気を増やすよりも、アイドルという存在に衣装を着せてあげ、彼女達に新しい魅力を与えるほうが、より素敵な関係ではないか。しかもそれが千円で服を買うことによって成し得てしまうのだ。そうすることによって、ゲームの中とはいっても君が君の手で育てたアイドルに対して君は恋人にも親にも妹にも似た感情を抱くことが今まで以上に可能になる。
 二次元の美少女達に私たちは触れることは出来なかった。画面の向こう側にいる彼女達をただ見ているしかなかった。今でもアニメのキャラなんかはその域を出ない。しかしアイマスのアイドル達に対しては衣装という形で彼女たちにあなたは触れることができるようになった。二次元の恋人が、あなたにとっての現実的な恋人に近づきつつある。
 その感覚を、そのエクスタシーを実感できるという点においても。ウィリアム・ギブスン攻殻機動隊などのサイバーパンクであった世界の一端を現実として体感できるという点においても。彼女達がより可愛くなりえるかもしれない服が一着1000円であるとして、それは高いであろか。

あとがき:私はアイマス未プレイです。そして千円出して服は買わないでしょうケチだから。さらにこれから発売されるキャバクラを舞台にした大人の恋愛アドベンチャーゲームにこのシステムを(貢システムの様に)導入すれば、更なるリアルなコミュニケーションを、恋愛体験をできることでしょう。まさにドリームですよ!ドリーム!
追記:Twitter / Account Suspendedさんに指摘された通り、アイマスDLC的システムは以前からあったのだ。例えば着せ替え人形の商品情報|リカちゃん|タカラトミーの様に現実ではない者に服などを買ってあげるという行為は珍しいものではなかった。ただ物理的な物として売られていたものが、情報としての物として売られるようになっただけなのだ―これは幾ばくか大きな衝撃だったのかもしれない。今回の事態は、この様なシステムが男性オタ世界には馴染がなかったがため、話題となったのかもしれない。これから、この様な商品は益々増えていくことだろう。

あいどる (角川文庫)

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